衣類には外に向けて、そして内なる自分に対して、いろいろな意味や役割があります。そして、その衣類には特有の「ボーダー(境界)」があるとも言えます。例えば制服は、着ている人の役割、職業を外の世界に向けて提示しています。制服はその役割を持つ人にしか着られないものですので、そこにボーダー(境界)が存在すると言えます。
社会の中で生きる女性として、私たちはその立場に応じて、こうであるべき、こうであることが望ましい、と思われている概念に沿った形で(その程度には個人差がありますが)身なりを整えています。年齢や仕事、時には既婚かどうかなどもその基準になります。それぞれの立場によって、大体このくらいの範囲内が「あるべき姿」だという社会からの要求を、はっきりした形でなくても私たちは受けているのです。
私自身、こうであるべき自分にふさわしく「ちゃんと」見えるよう、無意識に自分の姿をそれらの要求に合わせていると気づくことがあります。私はデザイナーだから、デザイナーらしくファッショナブルにしなくちゃ、また私はCEOでもあるので、プロフェッショナルらしくしなくちゃ、30代前半の女性として子供っぽくなく、かつ老け過ぎないように……などなど。
同時に、もちろんファッションというのはこういったボーダーをあえて超えて、外見への社会的基準の抑圧を逃れた自己表現や個性を表す手段になり得るものです。自分のスタイルや姿をクリエイティブに作って表現していくことを楽しむ女性たちもたくさんいます。
その中で私が最近興味を持っている衣類は、パジャマです。
もともとパジャマは寝る時のもの。あとはせいぜいルームウェアとして考えられてきました。しかし、パジャマからインスパイアされた最新ファッションのトレンドは、パジャマの境界を一気に広げています。どこからどこまでをパジャマと呼ぶかについては解釈が分かれるところですが、いずれにも共通するパジャマとしての条件は「着心地の良さ」ではないかと思います。生地であったり、カットの仕方、フィット感、色味などいろいろありますが、全てパジャマというのは着心地の良いもの。そしてリラックスできるものなのです。では、そんな心地よさを一日中楽しめるようにできないでしょうか。
シンプルだけどエレガントで洗練されたデザインは、年齢も社会的な立場も、そして性別もTPOの決まり事も越えることが出来ます。ならば、シンプルで質の良いパジャマのシャツは、他の衣類との組み合わせやコーディネート次第でどんな場面でも着ることができるはず。20代から80代+まで全ての女性が着られる服。全ての男性も年齢を問わず同じようにナチュラルに着こなすことができ、着心地を楽しめる服。これこそ最もボーダーレスな衣類と呼べるのではないかと私は思います。
私たちの作った「シルクパジャマセット」を通して、毎日の生活の中でリラックスした質の高い心地よさを感じていただけますように。
どうぞご感想、ご意見をお聞かせ下さい。
最後までお読みいただきありがとうございます。
Chiyono Anne xx